理事長所信2020

第49代理事長 堀内 雄次郎

この世界のためにできることは何だろう

この国のためにできることは何だろう

このまちのためにできることは何だろう

はじめに

このまちに生まれこのまちのために奔走した父をはやくになくした私はこのまちのために携わる機会を比較的はやい時期に与えていただきました。まちづくりの観点から自分の生まれ育ったこのまちに恩返しをしたい、父の意思を受け継ぎたいと思い武蔵野青年会議所に入会をしました。当初はまちづくりをする団体であると考えておりました。しかし、この団体の本質は、自己成長を促す団体であり、その先に明るい豊かなまちづくりがあるということを知りました。まちづくりはひとづくりと表裏一体です。ひとを育てることはまちを育てることであり、まちを発展させることはひとを進化させることにもつながるいうことを学ばせていただきました。ひとひとりの人生でできることには限りはありますが、未来へとつなぐための可能性は無限に秘めています。ひとはその想いを紡いで進化をしてきた生物です。父から受け継いだまちづくりの精神を自己の成長とともに次代につなげていく使命が私にはあると考え本年、武蔵野青年会議所理事長の職をお預かりさせていただきます。

この世界のためにできること

今の時代は世間で言われるほど悪い世界でしょうか。2015年に国際連合にて採択されたSDGs(Sustainable Development Goals)は今の世界が抱える大きな17の課題を2030年までに解決させることを目指した世界共通の開発目標です。この開発目標を国連が掲げた背景には2030年までに確実に達成することができるであろうという希望が含まれていると思っております。その根拠としていくつか例をあげると、メディアで発信されているような貧困地域はここ数年で激減をしています。性別にかかわらず教育を受けることは世界の常識になりつつあります。絶滅危惧種と言われる生物も数年前よりも減っているというデータもあります。相対的にものごとをみれば、100年前の世界より確実にこの世界は明るい豊かな世界になっているのです。

 環境保全、社会的責任、組織の在り方に対して評価をするESG(Environment、Social、Governance)が今後の世界では主流となる考えであると世間では注目をあげています。金銭という経済価値から「心の豊かさ」という価値に重きを置く時代がもうやってきていると言っても過言ではないのです。市民の意識変革を目的としている団体でもある青年会議所の運動はこの「心の豊かさ」を求める今の時代だからこそ、より一層その存在価値を高めなくてはなりません。戦後、荒廃したこの国を、「新日本の再建は我々青年の仕事である」という覚悟のもと、立ち上がり運動を始めた先輩諸氏。それから70年の時が経った現在も青年会議所は時代のニーズを捉え時代とともに進化をしてきております。青年会議所の他団体との大きな違いはその時代に合わせた運動発信を通じて学びを得る大人の学び舎であるという観点に重きをおいているところにもあると思っております。青年会議所は様々な問題に対して社会的責任をもって組織として運動を発信し、ひとりでも多くのActiveCitizens(能動的市民)を生み出すことを理想に掲げています。

 自らが能動的に学びを得に向かい、ひとのためにその学びを伝え、その学びが市民の意識を変える。江戸時代に近江商人が掲げたと言われている、売り手と買い手が満足するのは当然のこととしさらに、社会に貢献できてこそよい商売とされる「三方よし」の考え方は経済活動だけにとどまることなくこの世界をよりよく、持続可能な解決策を見出すための大きなヒントになると考えます。古来より、この考えに沿って行動をしていた日本人の精神は現代にも受け継がれていると信じております。その考えをより良く進化させ経済だけではなく普段の生活や行動などにも活用することが世界を変える歩みになると思います。

本年、武蔵野青年会議所は全ての事業においてこの「三方よし」の考えと「より良くなるため」の進化を常に考え運動を進めて参ります。

この国のためにできること

平成というひとつの時代が終わり、令和という新しい時代に移り変わりました。

この元号が変わるというのはこの国に生きているわたしたちにとって身近にありながら尊い歴史の目次です。この令和という時代をどのような形にするのかは今を生きる私たちがなすべきことであります。この時代を生きる子どもたちに明るい未来を紡いでいくためには日本人が元来より大切にそして誇りにしている道徳心や精神性を育む必要があると考えます。武蔵野青年会議所はこの目的を達成するために37回に渡りわんぱく相撲を開催して参りました。お互いの身体をぶつけあい、勝っても負けても相手を讃える相撲という競技を通じて途切れることなくこの精神を教え伝えて参りました。本年もこの日本人のもつ精神性を育むためにわんぱく相撲武蔵野場所を開催いたします。

近年、様々な情報取得方法の豊富さは逆に経験ではない情報という形でマイナスイメージの現実が見えてしまうことから未来に悲観的になってしまっている傾向にあり、将来の夢をもてない子どもが増えていると言われております。本年はここ東京の地においてオリンピック・パラリンピックが開催されます。トップアスリートの競技を間近で見ることができるこの機会は子どもたちに夢を与え、自尊感情の向上に寄与できる好機と考え、親と子がともに学べる機会を提供できる事業を開催させていただきます。

この国の将来を担う、子どもたちは地域の宝でもあり、私たち地域のひとたちで育てるという観点も持ち合わせなければなりません。昨今の環境変化により、子どもたちを取り巻く状況は著しく変化をしております。学校教育においては、学校教員の業務過多や学習指導要領の複雑化、ICT教育や英語教育など教師が教えることも、子どもたちが学習しなければならないことも多くなっております。家庭教育においては、片親家庭や夫婦共働きなどによる教育の行き届かなさ、祖父母も含め家族一体となり子どもたちを育んでいた環境が核家族化により減少するなど決して良い状況とは言えない環境下にあります。そのような状況にある現在は特に地域で子どもを育てるという環境が必要ではないでしょうか。学校教育、家庭教育では行き届かない社会的教育を行い子どもたちもまちの一員であるということを伝えられる事業を開催させていただきます。その先の未来には私たち青年会議所が主体となり子どもたちを地域で育て、見守る環境基盤を確立していきたいと考えます。

このまちのためにできること

武蔵野市というまちは先人の理想とそれを実現させるべき込めた想いと、このまちに住み暮らし仕事をしているひとたちの積極的な参画により成長を遂げ、日本有数の成熟されたまちになってきていると感じております。ただ、近隣のまちの発展によるひと、もの、かねの流出、現状を守ろうとし革新的な行動を起す事に躊躇をしてしまっている状況などこのまちを取り巻く環境は危機を迎えています。まちづくりに勝敗はなく、このまちを訪れ、住み、暮らし、命を紡ぎ生きていく人々がいかに豊かになれるかが肝心であると考えているからこそこの環境を打破しなくてはなりません。先に述べた「三方よし」という近江商人が大切にしていたとされる古き考えは英語で言うWin-Winの関係にさらに「世間」を加えた日本人がもつ商人の精神性を的確に表す言葉であると同時に経済を表すだけではなく全ての物事に通ずる考えであると思います。この考えをまちづくりに活かすことで持続可能な発展するまちづくりができるのではないかと考えます。そのためにはまず何を与え、何に満足をしていただき、何がこのまちのためになるかを考えなくてはならないと思います。武蔵野市には様々な魅力があると思っております。ただしその魅力に気づかず発信ができていないのも確かです。ないものねだりではなく、あるもの探しをし、このまちを訪れる人たちが皆、笑顔になれるような前向きな資源と魅力を探し気づいていただき、発信をすべきであると考えます。そのためにまちと一体となりともに発展成長ができるような、武蔵野市のもつ資源や魅力を引き出し発信する事業を開催させていただきます。

社会のためにできること

武蔵野市は市民アンケートに現れるような顕在的な問題点もありますが、どこかで感じていながらも表には現れない潜在的問題のほうが根深いものがあると感じております。具体的な問題に関してはその対処法も見つけやすいのですが、こういった潜在的な問題にたいしての明確な対処法は見つけづらくかつ皆が満足できる答えを導くのはさらに難しいと考えます。市民やこのまちを好きで訪れていただけるかた、このまちで活躍をされている諸団体の方々、そして行政関係の方を一堂に会し論じ合うことでこの潜在的問題点の顕在化とその解決方法についての答えに近づくことができるのではないかと考えます。

このまちはそれぞれの団体が非常に強い影響力をもっていて、それぞれの団体がそれぞれの理念に則り運動を展開していただいていることにより、活発にこのまちが機能をしており、それはこのまちの魅力のひとつであります。しかしながら、それぞれの団体の横のつながりはあまり強くないように思えます。それぞれの団体はその設立背景は違えど、自らもしくはこのまちをよりよくするために運動をしていることには変わりはありません。そのエネルギーを結集することでそれぞれが掲げる目的への距離は飛躍的に縮まると考えます。個の能力や個性を重んじる今の時代だからこその源を集めることで大きな化学反応を起こし、新たな力を生み出すものだと考えます。この横のつながりを強固にすることは潜在的問題点の顕在化だけではなく、顕在化している不安点のひとつでもある災害時など有事の際の対策も可能であります。有事の際は如何なる場面を想定しても完全に防ぐことはできません。だからこそ普段より顔の見える関係を創ることによりそのつながりは防災力の強化にもつながると確信をします。武蔵野青年会議所がこの横のつながりのパイプ役となり様々な意見を吸い上げ行政も含め広く提言、発信をさせていただきこのまちの新たな発展の一助にいたします。武蔵野青年会議所の先輩諸氏はかつて市の行政改革を提言し実行をしていただいた実績があります。本年はその事業を手本とした、横のつながりを強固にし市民の意識を変革する事業を開催させていただきます。

ひとのためにできること

青年会議所は20歳から40歳の青年経済人で構成されている組織です。40歳で卒業をするという特性がある故に毎年、会員を増やしていかないと組織の運営や運動発信にブレーキがかかってしまいます。ひとりでも多くの会員を増やすことは組織の実質的強化につながり、より強い運動発信につなぐことができます。青年会議所が目指す理想はひとりでも多くの会員を育て、未来のこのまちの中核を担う人財として排出をすることであります。現在も青年会議所を卒業した先輩諸氏がこのまちの中核を担い活躍をしております。 青年会議所は「修練、奉仕、友情」の三信条を掲げ運動を展開しております。この三信条は青年会議所に在籍中だけではなく未来を担う人財として掲げるべきものであり、この三信条を掲げる人財が未来のまちを築き、このまちを牽引していただけると信じております。

近年、武蔵野青年会議所は入会者数の増強に成功している半面、青年会議所に対しての魅力や意義を見出せず、退会をしてしまう会員も少なくありません。そのような会員をひとりでも出さぬよう武蔵野青年会議所が過去より大切にしている「義理と人情」をもって新入会員に接し、この「義理と人情」をもった会員の育成にも力を注いでいきます。

そのような人財を育てることこそが学び舎と言われる青年会議所の担いであり使命であると考えております。自己研鑽の想いがあればひとは誰でも成長できます。その土壌づくりをすることも青年会議所の担いです。本年は様々な機会の提供と多くの学びを促し、この自己研鑽にも力を入れることで未来につながる人財の育成に努めて参ります。

 青年会議所は世界組織であり、世界中で100を超える国と地域、約16万人の会員を有する団体です。様々な価値観をもつ会員と接することができる機会を得ることができる青年会議所ですが、特に本年は世界中の青年会議所会員が集まる世界会議が横浜の地で開催されます。青年会議所のもつスケールメリットを最大限に感じることができるこの機会を、未来につながる新たな関係構築、多くの学びの好機と捉え武蔵野青年会議所の会員もしっかりと掴み、地域に還元をして参ります。

新たな組織のためにできること

2013年より公益社団法人として運動を進めていた武蔵野青年会議所ですが、昨年末に一般社団法人として新たな歩みを始めました。公の益に帰する運動を展開している青年会議所ではありますがより広角的かつ効果的に運動を発信するべきであると判断をさせていただき、その運動発信にふさわしい法人格とはという何かという議論を重ねた結果「一般社団法人」という法人格を選択いたしました。法人格が変わったからといって発信をする運動に変わりはなく、むしろ今まで以上にフレキシブルに様々なニーズに応えることができる組織に昇華したと考えております。人財育成や公に提言ができるような組織に成るべく会員とともに成長をしていく組織として運営体制の見直しも図っていきます。また、この新しい法人格になってどのように運動が変わるのかを会員一人ひとりが理解し同じ方向を向いて発信ができるよう研修を重ね意識の醸成を図ります。また、より運動発信を広角的に行うためにもSNSを効果的に利用し会員自らが自発的に発信できる環境を整えひとりでも多くの方のもとに届くような広報を促して参ります。

2022年に武蔵野青年会議所は創立50周年という節目の年を迎えます。その記念すべき創立半世紀の年に向け本年度は、より本格的に準備を進めて参ります。東京都内には武蔵野青年会議所も含め、24の青年会議所が存在しております。この24青年会議所をまとめている東京ブロック協議会、その最大の運動発信の場である東京ブロック大会の誘致活動を行い、対内外ともに発信をすることができる、未来へとつなぐ礎を築きあげます。

結びに

世界が大きく変革を迎えている現代。先人たちが紡ぎつないできた時代と想いの連鎖の中に私たちは存在しております。先人の築き上げてくださった礎をさらに進化させるべく、未来へとつなぐ前向きな変化をしていかなければなりません。その先駆者となり歩みを続けられるように、そして、私たちの築く礎の上にまだ見ぬ未来を生きるひとたちに想いをつなげられるよう、運動を進めて参ります。

 
2020年度 スローガン
進化
~未来へとつなぐ想いの連鎖~
 
2020年度 基本理念
ともに高めあい未来につなぐ進化するJayceeへ
 
2020年度 基本方針
三方よしを昇華させた未来につなぐ事業構築
地域とともに未来につなぐ運動発信
未来を担う子どもたちに向けた地域教育の基盤づくり
ともに成長し進化に向けた組織づくり